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最高裁判所第三小法廷 昭和59年(あ)1087号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人田中義信、同峯満の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、原判決の是認する第一審判決によると、被告人は、長崎県松浦市が発注する各種工事に関し、入札参加者の指名及び入札の執行を管理する職務権限をもつ同市市長と共謀を遂げ、近く施行される同市長選挙に立候補の決意を固めていた同市長において、再選された場合に具体的にその職務を執行することが予定されていた市庁舎の建設工事等につき、電気・管工事業者安東敏之から入札参加者の指名、入札の執行等に便宜有利な取計いをされたい旨の請託を受けたうえ、その報酬として、同市長の職務に関し、現金三〇〇〇万円の供与を受けたというのである。このように、市長が、任期満了の前に、現に市長としての一般的職務権限に属する事項に関し、再選された場合に担当すべき具体的職務の執行につき請託を受けて賄賂を収受したときは、受託収賄罪が成立すると解すべきであるから、被告人の本件所為について受託収賄罪の成立を認めた原判断は正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長島 敦 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上寿夫)

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